こぎだし

GUIDE

ローイングとは — ボート競技(漕艇)を最初から知る

ローイングは、オールで水を押して艇を進め、決められた距離を漕ぐ速さを競うボート競技です。競技の輪郭から、ジムのローイングマシンとの関係、種目のかたちまで、ボート部に入ったばかりの人が読む順にまとめました。

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朝の静かな水面をシングルスカルが進む。漕手は進行方向に背を向けて座り、水中のブレードが艇を押し出している。

ローイングとは — オールで艇を進めるボート競技

ローイングは、決められた距離を漕ぐ速さを競う、水の上のボート競技です。進む力はすべて人の漕ぎで、競技用の艇にエンジンや帆はありません。日本語では「ボート」や「漕艇(そうてい)」とも呼ばれ、どれも同じ競技を指します。学校によって「ボート部」「漕艇部」と部の名前が違っても、中身は同じです。オリンピックでも行われている競技です。

シングルスカルの側面図。艇は右へ進み、漕手は左を向いて座っている。水面沿いの大きな矢印に「進む向き」、漕手の顔の先の小さな矢印に「漕手が見ている向き」、下の札に「後ろ向きに進む競技」と書かれている。
艇は右へ、漕手の目線は左へ。ローイングは進行方向に背を向けて漕ぐ。

いちばんの特徴は、漕手(そうしゅ=艇を漕ぐ選手)が進行方向に背を向けて座ることです。図では、艇は右へ進み、漕手の顔は左を向いています。レース中の漕手から、ゴールはほとんど見えません。ゴールに背を向けたまま、漕ぎ続けるからです。オールは水をかくための長い棒で、艇の横にある金具に載せて、てこのように使います。国際的な競漕規則(きょうそうきそく=レースのルール)でも、オールをてことして使うことと、進む方向に背を向けて座って漕ぐことが、競技の定義の核になっています。多くの選手は、中学・高校・大学の部活動でこの競技に初めて出会います。

ジムのローイングマシンとの関係 — 同じ動きを陸に持ってきた道具

「ローイング」という言葉には、もうひとつの意味があります。ジムにある、座って引くトレーニングマシンです。検索でこのページに来た方の中には、マシンのことを調べたかった方もいるはずです。それも間違いではありません。競技の世界では、このマシンをエルゴメーター(ローイングマシン)、略して「エルゴ」と呼びます。漕ぐ動きを陸上で再現してタイムを測る機械で、ボート部でも陸上トレーニングの中心です。エルゴのタイムは、部や学校が違っても比べられる、体力の物差しになります。

左右2コマの対比。左はジムのエルゴメーターを漕ぐ漕手、右は同じ姿勢でシングルスカルを漕ぐ漕手。上に「動きは同じ」、下の札に「エルゴ(陸)」「艇(水の上)」と書かれている。
エルゴ(陸)と艇(水の上)。動きは同じで、場所が違う。

つまりジムのローイングマシンは、水上の競技の動きを陸に持ってきた道具です。図のとおり、動きは同じで、場所が違います。ただし、マシンと艇は同じではありません。水の上では、同じ出力でも艇の速さは同じにはなりません。細い艇の上でバランスを取りながら、力を艇の進みに変える技術が要るからです。エルゴは出力を測る物差しとして優れていますが、その技術までは測ってくれません。だから競技では、出力の土台をエルゴで作り、それを艇の速さに変える技術を水の上で磨きます。マシンの数字の読み方に興味があれば、レート(1分間に漕ぐ本数)の管理を扱ったエルゴのレート管理の記事と、ダンパー(フライホイールに入る空気の量を変えるレバー)の誤解を扱ったダンパーと抵抗の記事が参考になります。なお、フィットネス目的のメニューやマシンの購入情報は、このサイトでは扱っていません。

レースの形 — 横に並んで一斉に漕ぎ、着順で決める

ボートのレースは、複数のクルー(同じ艇に乗る選手の組)が横に並び、同じ距離を同時に漕いで着順を競います。国際大会の標準は2000mです。国内では、1000mや500mで行われる大会もあります。コースはブイ(水面に浮かべた目印)でレーンに区切られ、レーンの数は大会によって変わります。大きな大会は予選で始まり、負けたクルーにも敗者復活戦でもう一度チャンスが回ってきます。そこから準決勝、決勝へと勝ち上がっていきます。こうしたボートの大会は、レガッタとも呼ばれます。スタートや反則といった決まりごとは競漕規則の記事に、大会当日の受付から片付けまでの流れは初めての大会の記事にまとめてあります。

種目のかたち — スカルとスイープ、1人乗りから9人乗りまで

真上から見た2コマの対比。左はシングルスカルで、1人の漕手が左右に1本ずつ計2本のオールを持つ。右はペアで、2人の漕手がそれぞれ1本のオールを互い違いの舷に伸ばしている。札に「スカル=1人2本」「スイープ=1人1本」と書かれている。
違いはオールの本数。スカルは1人2本、スイープは1人1本。

漕ぎ方には二つの系統があります。1人が左右1本ずつ、計2本のオールを持つのがスカル、1人が1本のオールを両手で持つのがスイープです。図で見ると、違いはオールの本数で一目で分かります。種目は、この漕ぎ方と人数の組み合わせで分かれます。1人乗りのシングルスカルがいちばん小さく、いちばん大きいエイトには、漕手8人と、コックス(オールを持たず、舵取りとクルーへの指示を受け持つ人)の、合わせて9人が乗ります。競技用の艇は、シェルとも呼ばれます。

日本の中学・高校の大会は、全国大会ではスカル種目だけで行われています(全国高等学校選手権では、2001年から全種目がスカルです。地方には、ナックルフォアという安定した幅広の艇で漕ぐ大会も残っています)。ペア(2人乗りのスイープ艇)やエイトのようなスイープ種目は、多くの場合、大学からのカテゴリーで登場します。中高生なら、まず自分の漕ぎ方はスカルだと覚えれば十分です。1x や 8+ といった記号の読み方や、艇の各部の名前は、艇と用具の記事で図解しています。誰がどの席に座り、何を任されるのかは、クルーの席と役割にまとめました。

一漕ぎの流れ — 主役は脚

腕でぐいぐい引く運動に見えますが、主役は脚です。座席(シート)はレールの上を前後に滑り、足は靴ごとストレッチャー(足を固定する斜めの台)に固定されています。脚でストレッチャーを押した力を、体や腕を通してオールに伝え、艇を進めます。力を使う細かい順序は、世界の競技団体の間でも記述に幅があります。まずは、脚の力が主役で全身を使う運動、と覚えてください。

キャッチの姿勢。脚を深く曲げ、上体を前傾させ、腕を伸ばして、立てたブレードを水面に入れる瞬間
1. キャッチ
腕は伸びたまま。手を上げて、入れるだけ
ドライブの途中。脚を押してシートが進み、腕はまだ伸びていて、ブレードは水中にある
2. ドライブ
脚から押す。腕で引くのはあと
フィニッシュの姿勢。脚は伸びきり、上体はわずかに後ろへ倒れ、握ったハンドルは肋骨の下まで引き込まれ、両ひじは曲がって体の後ろへ引かれている。ブレードは水面にあり、抜ける直前
3. フィニッシュ
体側まで引き切って、ブレードを抜く
リカバリー。腕が先に前へ伸び、体が戻り始め、ブレードは水面の上を水平に運ばれる
4. リカバリー
手→体→脚の順で、ゆっくり前へ
一漕ぎは、4つの局面がつながったひとつの円。

一漕ぎは、四つの場面がひとつの輪になっています。ブレード(オールの先の、水をとらえる板の部分)を水に入れるのがキャッチ、水中で艇を加速させるのがドライブ、ブレードを水から抜くのがフィニッシュ、次のキャッチへ静かに戻るのがリカバリーです。図を、キャッチから順に見てください。この輪を何百回も繰り返して、艇は進み続けます。それぞれの局面のやり方は、技術記事の索引から読めます。最初の一本には、キャッチの記事が向いています。

ここから読み進める — 立場別の次の一歩

ここまでが、競技の輪郭です。この先は、はじめての漕手ガイドを順に読み進めてください。迷ったら、次のどれかから入るのが近道です。

家族が競技を始めた保護者の方には、費用や観戦、安全の考え方をまとめた保護者向けページがあります。パラローイング(障がいのある選手のためのボート競技)も、この競技のひとつの姿で、クラスや用具の入門記事があります。これから始められる場所を探している場合も、個別のクラブ名はここには書きません。古い情報を渡すことが、いちばんの遠回りになるからです。出発点として、日本ローイング協会の公開情報を確認してください。

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