こぎだし

GUIDE

ローイングとは — ボート競技(漕艇)を最初から知る

ローイングは、オールで水を押して艇を進め、決められた距離を漕ぐ速さを競うボート競技です。競技の輪郭から、ジムのローイングマシンとの関係、種目のかたちまで、ボート部に入ったばかりの人が読む順にまとめました。

・ 読了目安 7

朝の静かな水面をシングルスカルが進む。漕手は進行方向に背を向けて座り、水中のブレードが艇を押し出している。

ローイングとは — オールで艇を進めるボート競技

ローイングは、決められた距離を漕ぐ速さを競う、水の上のボート競技です。 進む力はすべて人の漕ぎで、競技用の艇にエンジンや帆はありません。 日本語では「ボート」や「漕艇(そうてい)」とも呼ばれ、どれも同じ競技を指します。 学校によって「ボート部」「漕艇部」と部の名前が違っても、中身は同じです。 オリンピックでも行われている競技です。

シングルスカルの側面図。艇は右へ進み、漕手は左を向いて座っている。水面沿いの大きな矢印に「進む向き」、漕手の顔の先の小さな矢印に「漕手が見ている向き」、下の札に「後ろ向きに進む競技」と書かれている。
艇は右へ、漕手の目線は左へ。ローイングは進行方向に背を向けて漕ぐ。

いちばんの特徴は、漕手そうしゅ=艇を漕ぐ選手が進行方向に背を向けて座ることです。図では、艇は右へ進み、漕手の顔は左を向いています。 レース中の漕手から、ゴールはほとんど見えません。ゴールに背を向けたまま、漕ぎ続けるからです。 オールは水をかくための長い棒で、艇の横にある支点に載せて、てこのように使います。 国際的な競漕規則(きょうそうきそく=レースのルール)でも、オールをてことして使うことと、 進む方向に背を向けて座って漕ぐことが、競技の定義の核になっています。 多くの選手は、中学・高校・大学の部活動でこの競技に初めて出会います。

ジムのローイングマシンとの関係 — 同じ動きを陸に持ってきた道具

「ローイング」という言葉には、もうひとつの意味があります。ジムにある、 座って引くトレーニングマシンです。検索でこのページに来た方の中には、 マシンのことを調べたかった方もいるはずです。それも間違いではありません。 競技の世界では、このマシンをエルゴメーター(ローイングマシン)、略して「エルゴ」と呼びます。 漕ぐ動きを陸上で再現してタイムを測る機械で、ボート部でも陸上トレーニングの中心です。 エルゴのタイムは、部や学校が違っても比べられる、体力の物差しになります。

左右2コマの対比。左はジムのエルゴメーターを漕ぐ漕手、右は同じ姿勢でシングルスカルを漕ぐ漕手。上に「動きは同じ」、下の札に「エルゴ(陸)」「艇(水の上)」と書かれている。
エルゴ(陸)と艇(水の上)。動きは同じで、場所が違う。

つまりジムのローイングマシンは、水上の競技の動きを陸に持ってきた道具です。 図のとおり、動きは同じで、場所が違います。ただし、マシンと艇は同じではありません。 水の上では、同じ出力でも艇の速さは同じにはなりません。細い艇の上でバランスを 取りながら、力を艇の進みに変える技術が要るからです。エルゴは出力を測る物差しとして 優れていますが、その技術までは測ってくれません。だから競技では、出力の土台をエルゴで作り、 それを艇の速さに変える技術を水の上で磨きます。マシンの数字の読み方に興味があれば、レート1分間に漕ぐ本数の管理を扱ったエルゴのレート管理の記事と、ダンパーフライホイールに入る空気の量を変えるレバーの誤解を扱ったダンパーと抵抗の記事が参考になります。 なお、フィットネス目的のメニューやマシンの購入情報は、このサイトでは扱っていません。

レースの形 — 横に並んで一斉に漕ぎ、着順で決める

ボートのレースは、複数のクルー同じ艇に乗る選手の組が横に並び、同じ距離を同時に漕いで着順を競います。国際大会の標準は2000mです。 国内では、1000mや500mで行われる大会もあります。コースはブイ(水面に浮かべた目印)で レーンに区切られ、レーンの数は大会によって変わります。大きな大会は予選で始まり、 負けたクルーにも敗者復活戦でもう一度チャンスが回ってきます。そこから準決勝、 決勝へと勝ち上がっていきます。こうしたボートの大会は、レガッタとも呼ばれます。 スタートや反則といった決まりごとは競漕規則の記事に、 大会当日の受付から片付けまでの流れは初めての大会の記事に まとめてあります。

種目のかたち — スカルとスイープ、1人乗りから9人乗りまで

真上から見た2コマの対比。左はシングルスカルで、1人の漕手が左右に1本ずつ計2本のオールを持つ。右はペアで、2人の漕手がそれぞれ1本のオールを互い違いの舷に伸ばしている。札に「スカル=1人2本」「スイープ=1人1本」と書かれている。
違いはオールの本数。スカルは1人2本、スイープは1人1本。

漕ぎ方には二つの系統があります。1人が左右1本ずつ、計2本のオールを持つのがスカル、 1人が1本のオールを両手で持つのがスイープです。図で見ると、違いはオールの本数で 一目で分かります。種目は、この漕ぎ方と人数の組み合わせで分かれます。 1人乗りのシングルスカルがいちばん小さく、いちばん大きいエイトには、漕手8人と、コックスオールを持たず、舵取りとクルーへの指示を受け持つ人の、合わせて9人が乗ります。競技用の艇は、シェルとも呼ばれます。

日本の中学・高校の大会はスカル種目のみです。全国高等学校選手権では、2001年から 全種目がスカルで行われています。ペア(2人乗りのスイープ艇)やエイトのような スイープ種目は、大学からのカテゴリーで登場します。中高生なら、まず自分の漕ぎ方は スカルだと覚えれば十分です。1x や 8+ といった記号の読み方や、艇の各部の名前は、艇と用具の記事で図解しています。

一漕ぎの流れ — 主役は脚

腕でぐいぐい引く運動に見えますが、主役は脚です。座席(シート)はレールの上を 前後に滑り、足は靴ごとストレッチャー足を固定する斜めの台に固定されています。脚でストレッチャーを押した力を、体や腕を通してオールに伝え、 艇を進めます。力を使う細かい順序は、世界の競技団体の間でも記述に幅があります。 まずは、脚の力が主役で全身を使う運動、と覚えてください。

キャッチの姿勢。脚を深く曲げ、上体を前傾させ、腕を伸ばして、立てたブレードを水面に入れる瞬間
1. キャッチ
腕は伸びたまま。手を上げて、入れるだけ
ドライブの途中。脚を押してシートが進み、腕はまだ伸びていて、ブレードは水中にある
2. ドライブ
脚から押す。腕で引くのはあと
フィニッシュの姿勢。脚は伸びきり、上体はわずかに後ろへ倒れ、握ったハンドルは肋骨の下まで引き込まれ、両ひじは曲がって体の後ろへ引かれている。ブレードは水面にあり、抜ける直前
3. フィニッシュ
体側まで引き切って、ブレードを抜く
リカバリー。腕が先に前へ伸び、体が戻り始め、ブレードは水面の上を水平に運ばれる
4. リカバリー
手→体→脚の順で、ゆっくり前へ
一漕ぎは、4つの局面がつながったひとつの円。

一漕ぎは、四つの場面がひとつの輪になっています。ブレードオールの先の、水をとらえる板の部分を水に入れるのがキャッチ、水中で艇を加速させるのがドライブ、ブレードを水から 抜くのがフィニッシュ、次のキャッチへ静かに戻るのがリカバリーです。 図を、キャッチから順に見てください。この輪を何百回も繰り返して、 艇は進み続けます。それぞれの局面のやり方は、技術記事の索引から読めます。最初の一本には、キャッチの記事が向いています。

ここから読み進める — 立場別の次の一歩

ここまでが、競技の輪郭です。この先は、はじめての漕手ガイドを順に読み進めて ください。迷ったら、次のどれかから入るのが近道です。

家族が競技を始めた保護者の方には、費用や観戦、安全の考え方をまとめた保護者向けページがあります。 パラローイング(障がいのある選手のためのボート競技)も、この競技のひとつの姿で、クラスや用具の入門記事があります。 これから始められる場所を探している場合も、個別のクラブ名はここには書きません。 古い情報を渡すことが、いちばんの遠回りになるからです。出発点として、日本ローイング協会の公開情報を確認してください。