キャッチとは、ブレード(オールの先の平たい部分)を水に入れる瞬間のことです。 一漕ぎの始まりであり、ここで水を捉えられるかどうかで、 その一本の質が決まります。
キャッチが難しいのは、止まって行う動作ではないからです。艇は進み続け、 体はシートの上で動き続けている。その中で「ブレードを入れる」と 「脚で押し始める」というふたつの動作を、正しい順番でつなぐ必要があります。 タイミングと姿勢が同時に問われる、一漕ぎでいちばん忙しい瞬間です。 だから、動きを分解して、ひとつずつ確かめながら作っていきます。




まず、姿勢を準備する
キャッチの良し悪しは、ブレードが水に触れる前にほとんど決まっています。 確かめる場所は、フォワードエンド(シートがいちばん前まで来た、 一漕ぎを始める位置)での体の形です。
- 腕— まっすぐ前に伸びて、肩の力は抜けている。ハンドルを握りしめない。
- 背中— 骨盤から前傾して、背中はまっすぐ。丸めて遠くまで届かせようとしない。
- 脚— 深く曲がって、いつでも押し出せる状態。力を出すのは腕より先に脚。
この形ができていれば、キャッチですることは 「手を少し上げて、ブレードを水に入れる」だけです。 体を前に投げ出したり、腕でかき込んだりする大きな動作はいりません。 リカバリー(ブレードが水から出て、次のキャッチへ戻るまでの区間)のうちに 体の準備を終えて、シートが前に着いたときには 「あとは入れるだけ」になっているのが理想です。
陸上から、段階的に作る
順番は、陸上 → エルゴメーター(ローイングマシン)→ 乗艇(実際に艇に乗って水の上で行う練習)。 いきなり水の上で全部をやろうとせず、確かめる項目をひとつずつ増やします。
- 陸上で順番をなぞる鏡の前などで前傾の姿勢を作り、「手を上げる → 脚で押す」の順番をゆっくり繰り返す。腕でかき込む動きが先に出ないことだけを確認する。
- エルゴで、低いレートで通すレート(1分間に漕ぐ本数)を落として漕ぎ、脚 → 体幹 → 腕の順番を崩さないままフォワードエンドの形に戻ってこられるかを見る。目安は下の値を参考に。
- 乗艇でロールアップをするロールアップは、リカバリーの途中で早めにブレードを立てて(スクエア)、水面すれすれに構えてからキャッチに入るドリル。「立てる → 入れる → 押す」の順番を、落ち着いた水面でゆっくり確かめる。
「掴む」を言葉にする
キャッチの合言葉は「強く」ではなく「静かに、素早く」。 ブレードを水に入れてから、脚で押し始める。 この順番が守れたとき、ブレードは水を「掴んで」います。 掴む前に引き始めると、ブレードは水面の近くを滑って、力が艇に伝わりません。
自分で確かめる手がかりは「音」です。ブレードが水に入るとき、 「ポチャン」と重い音がしたら、入りが遅れているか、叩き込んでいます。 「トッ」と短く小さな音で入ったら、静かに掴めた一本です。 音なら、漕ぎながらでも自分で気づけます。
次の練習で試せる一歩
覚えることが多く見えても、次の練習で試すのはひとつだけです。 漕ぎ出しの落ち着いた時間に、キャッチの音だけを聞いてみましょう。 「ポチャン」が「トッ」に変わったら、それが水を掴めた一本です。
まずは動きの順番を、一緒に確かめましょう。
