こぎだし

TECHNIQUE

キャッチを作る — 水を掴む最初の一瞬

水を「掴む」感覚は、いきなり艇の上では身につきません。まずは、その動きを分解して理解することから始めましょう。

読了目安6分レベル入門公開日2026.07.13
静かな水面に、オールのブレードが今まさに触れ、小さな波紋がひとつ広がる。キャッチの一瞬を描いた線画。

キャッチとは、ブレード(オールの先の平たい部分)を水に入れる瞬間のことです。 一漕ぎの始まりであり、ここで水を捉えられるかどうかで、 その一本の質が決まります。

キャッチが難しいのは、止まって行う動作ではないからです。艇は進み続け、 体はシートの上で動き続けている。その中で「ブレードを入れる」と 「脚で押し始める」というふたつの動作を、正しい順番でつなぐ必要があります。 タイミングと姿勢が同時に問われる、一漕ぎでいちばん忙しい瞬間です。 だから、動きを分解して、ひとつずつ確かめながら作っていきます。

キャッチの姿勢。脚を深く曲げ、上体を前傾させ、腕を伸ばして、立てたブレードを水面に入れる瞬間
1. キャッチ
腕は伸びたまま。手を上げて、入れるだけ
ドライブの途中。脚を押してシートが進み、腕はまだ伸びていて、ブレードは水中にある
2. ドライブ
脚から押す。腕で引くのはあと
フィニッシュの姿勢。脚は伸びきり、上体はわずかに後ろへ倒れ、握ったハンドルは肋骨の下まで引き込まれ、両ひじは曲がって体の後ろへ引かれている。ブレードは水面にあり、抜ける直前
3. フィニッシュ
体側まで引き切って、ブレードを抜く
リカバリー。腕が先に前へ伸び、体が戻り始め、ブレードは水面の上を水平に運ばれる
4. リカバリー
手→体→脚の順で、ゆっくり前へ
一漕ぎは、4つの局面がつながったひとつの円。

まず、姿勢を準備する

キャッチの良し悪しは、ブレードが水に触れる前にほとんど決まっています。 確かめる場所は、フォワードエンド(シートがいちばん前まで来た、 一漕ぎを始める位置)での体の形です。

  • — まっすぐ前に伸びて、肩の力は抜けている。ハンドルを握りしめない。
  • 背中— 骨盤から前傾して、背中はまっすぐ。丸めて遠くまで届かせようとしない。
  • — 深く曲がって、いつでも押し出せる状態。力を出すのは腕より先に脚。

この形ができていれば、キャッチですることは 「手を少し上げて、ブレードを水に入れる」だけです。 体を前に投げ出したり、腕でかき込んだりする大きな動作はいりません。 リカバリー(ブレードが水から出て、次のキャッチへ戻るまでの区間)のうちに 体の準備を終えて、シートが前に着いたときには 「あとは入れるだけ」になっているのが理想です。

陸上から、段階的に作る

順番は、陸上 → エルゴメーター(ローイングマシン)→ 乗艇(実際に艇に乗って水の上で行う練習)。 いきなり水の上で全部をやろうとせず、確かめる項目をひとつずつ増やします。

  1. 陸上で順番をなぞる
    鏡の前などで前傾の姿勢を作り、「手を上げる → 脚で押す」の順番をゆっくり繰り返す。腕でかき込む動きが先に出ないことだけを確認する。
  2. エルゴで、低いレートで通す
    レート(1分間に漕ぐ本数)を落として漕ぎ、脚 → 体幹 → 腕の順番を崩さないままフォワードエンドの形に戻ってこられるかを見る。目安は下の値を参考に。
  3. 乗艇でロールアップをする
    ロールアップは、リカバリーの途中で早めにブレードを立てて(スクエア)、水面すれすれに構えてからキャッチに入るドリル。「立てる → 入れる → 押す」の順番を、落ち着いた水面でゆっくり確かめる。
目安のレート
18–20spm
ドリルの時間
10min
spm はレート(1分間に漕ぐ本数)の単位。値は一般的に語られる目安で、艇や体格、クルー、指導方針によって変わります。速さより丁寧さを優先しましょう。

「掴む」を言葉にする

キャッチの合言葉は「強く」ではなく「静かに、素早く」。 ブレードを水に入れてから、脚で押し始める。 この順番が守れたとき、ブレードは水を「掴んで」います。 掴む前に引き始めると、ブレードは水面の近くを滑って、力が艇に伝わりません。

自分で確かめる手がかりは「音」です。ブレードが水に入るとき、 「ポチャン」と重い音がしたら、入りが遅れているか、叩き込んでいます。 「トッ」と短く小さな音で入ったら、静かに掴めた一本です。 音なら、漕ぎながらでも自分で気づけます。

次の練習で試せる一歩

覚えることが多く見えても、次の練習で試すのはひとつだけです。 漕ぎ出しの落ち着いた時間に、キャッチの音だけを聞いてみましょう。 「ポチャン」が「トッ」に変わったら、それが水を掴めた一本です。

まずは動きの順番を、一緒に確かめましょう。