PARENTS
保護者の方へ — お子さんは、こういう競技をしています
お子さんが「ボート部に入った」と言ったとき、競技を見たことのある保護者の方は ほとんどいません。このページは、競技の仕組み、安全の考え方、家庭でできること、 大会の見方を、ここだけで分かるようにまとめました。
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お子さんがやっている競技のこと
細かい話の前に、まず三つだけ押さえてください。
ローイングは、オールで水を押して艇を進め、決められた距離を漕ぐ速さを競う競技です。 漕ぎ方には二つの系統があり、スカル(1人が左右1本ずつ、計2本のオールを持つ漕ぎ方)と、スイープ(1人が1本のオールを両手で持つ漕ぎ方)と呼ばれます。日本の中学・高校の大会は、シングルスカルやダブルスカルなどスカル種目のみで行われています(全国高等学校選手権大会などでは 2001年に全種目がスカルに統一されました)。ペアやエイトといったスイープ種目に 出会うのは、大学以上のカテゴリーからです。
次に「エルゴ」。エルゴ(エルゴメーターの略。漕ぐ動きを陸上で再現し、タイムを測るローイングマシン)は陸上トレーニングの中心で、決まった距離を漕ぐタイムが、選手の体力を測る 共通の物差しになっています。距離は高校では2000m、中学では1000mが目安になることが多く、「2000(ニセン)のタイムが上がった・ 落ちた」という会話は、選手にとって成績表の話に近い重みがあります。
練習の一日は、朝練(授業前のトレーニング)、乗艇(じょうてい。実際に艇に乗って水の上で行う練習)、そしてエルゴや筋力トレーニングといった陸上練習の組み合わせです。 大会は、複数の艇が並んで一斉にスタートし、予選から敗者復活戦・準決勝などを 経て決勝へ進む方式が基本です。
用語を全部覚える必要はありません。目標は「夕食の会話が分かるようになる」 くらいで十分です。聞き慣れない言葉が出てきたら、用語辞典で調べられます。
よく間違われる、三つの競技
「ボート部に入った」と聞いて思い浮かべたものが、実は別の競技だった。 これは、とてもよくあることです。どれも独立した立派な競技ですが、 お子さんがやっているのは、そのどれでもありません。
見分け方でいちばん確実なのは、道具と、体の向きです。ローイングのオール(水をかくための棒。艇側にある支点に載せて、てこのように使う)は、艇についた支点に載せて使います。だから漕ぎ手は進行方向に背を向けて 座ることになる。国際統括団体の競漕規則は、その第1条で「オールをてこと して使い、艇の進む方向に背を向けて座って漕ぐこと」と、この二つを競技の 定義そのものとして書いています。
いっぽうカヌー・カヤックで使うパドル(カヌー・カヤックで水をかく道具。艇に取り付けず、手で持って使う)は、艇に取り付けません(国際カヌー連盟の競技規則が「パドルはいかなる 方法でも艇に取り付けてはならない」と定めています)。支点が手の中にある ので、進行方向を向いたまま漕げます。日本オリンピック委員会のカヌーの 紹介も、「ボートとは異なり、漕ぎ手は艇の進行方向に向いているのが特徴」と 説明しています。
セーリングは、帆に受けた風で進む競技です。競技規則は、艇を速くしたり 遅くしたりするのに使ってよいのは風と水だけで、体を動かして艇を推進させては ならない、と定めています。人の力で進むローイングとは、進む力そのものが 違うわけです。オリンピックでも、ローイング・カヌー・セーリングは それぞれ別の競技として行われています。
そして、いちばん多いのがボートレース(競艇)との取り違えでしょう。 こちらはモーターボート競走法にもとづく公営競技で、主催するのは 地方公共団体です。エンジンの付いた艇で順位を競います。 ローイングの艇にエンジンは付いていません。
名前がまぎらわしいのには、事情があります。ローイングの側も、ボートレースの側も、この二十数年のあいだに呼び名が変わっているのです。少し前の資料や、先輩・指導者の話に「ボート」「漕艇(そうてい)」という 言葉が混ざるのは、そのためです。どれも同じ競技を指しています。
どれが優れているという話ではありません。ただ、お子さんの話を聞くときに 「どの競技の話なのか」が分かっていると、会話はぐっと通じやすくなります。
安全の心配に、正面から答える
保護者の方がいちばん気になるのは、「水の上で、危なくないのか」だと思います。 ここは、ごまかさずに書きます。
まず、競技規則が選手に泳力を求めています。2024年4月版の競漕規則(レースの 公式ルール)の細則では、競技者に50mを泳げること、そして水中で どこにもつかまらずに3分以上、首から上を水の上に維持できることが 求められています。これは規則が定める最低ラインで、チームによっては プールでのスイムテストを行って確認します。お子さんの泳力に不安がある場合は、 入部の早い段階で指導者に伝えておくことをおすすめします。
艇そのものにも、安全のための決まりがあります。現在の競技用の艇は、 完全に浸水しても人がつかまったまま浮いていられる浮力を持つように 作られています。さらに規則は、バウボール(艇の先端に付ける、衝突時の衝撃をやわらげる白いゴム製のボール)の装着や、緊急時に片手のひと操作(または手を使わずに)両足がすぐ抜ける 靴の仕組みを義務づけています。装備の決まりは大会のたびに係員が確認し、 不備があれば直るまで水に出られません(詳しくは出艇前の監視と航行規則へ)。 そして、沈(艇の転覆・落水)が実際に起きたとき選手本人がどう動くのかは、沈したら — 落水時の手順と、冬の水の話に まとめてあります。お子さんと一緒に読めるページです。
ライフジャケット(救命具)については、日本ローイング協会が「安全マニュアル」と 救命具使用の指針を公開しており、練習時は救命具の携行を基本としたうえで、 着用の要否や種類は水域や大会ごとのルールで決められています。泳ぎに不安が ある場合や経験の浅い中学生などには、着用が求められる場面もあります。 お子さんのチームがどんなルールで活動しているかは、学校・チームに 確認できます。
天候についても、協会の安全マニュアルは考え方を示しています。雷鳴や稲妻が 確認できる状況では艇を出さないこと。暑い時期は暑さ指数などを目安に運動を 調整すること。風や波で危ないと判断されれば、練習は中止・変更されます。 こうした判断は指導者や主催者が行うものです。夏の練習に向けて家庭でできる 暑さへの備えは、熱中症と暑熱対策に まとめてあります。
安全の最終判断は、学校・指導者・大会の主催者にあります。 そして、心配なことは遠慮なく先生や指導者に聞いてかまいません。「泳力の確認はどうしていますか」「救命具のルールはどうなっていますか」という 質問は、過保護ではなく、チームの側も想定している普通の確認です。
家庭でできる支援
競技の技術に関して、保護者にできることはほとんどありません。 家庭にしかできない支援は、別のところにあります。
一つめは食事です。ローイングは消費エネルギーの大きい競技で、 練習量に見合った量を、練習の前後に合ったタイミングで食べることが土台に なります。特別なサプリメントを探すより、まず食事の量と朝食を整えることが 先です。詳しい考え方はスポーツ栄養の基礎に 書きました。
二つめは睡眠です。朝練のある生活は、起床がとても早くなります。 就寝時刻から逆算した生活リズムを家庭で支えられると、それだけで大きな支援に なります(睡眠とリカバリー)。
三つめは、体調の変化に気づくことです。毎日顔を合わせる保護者は、 指導者よりも早く変化に気づける立場にいます。疲れがいつまでも抜けない、 顔色が悪い、食欲が落ちた。特に成長期の貧血は、こうした形で保護者が最初に 気づきやすいサインです(鉄と貧血、 そしてエネルギー不足)。また、腰の痛みを我慢させないでください (腰痛の予防)。家庭で診断する必要は ありません。いつもと違う様子があれば練習を休ませ、医療機関に相談する。 それだけで十分です。
四つめは声かけです。エルゴのタイムが伸びない時期は、 どの選手にも必ず来ます。数字は本人がいちばん気にしています。タイムだけで 評価せず、続けていること自体を認める言葉が、長く効きます。
最後に費用のこと。部費、ウェア、合宿、遠征、大会への参加などに お金がかかりうる競技です。ただし、何にいくらかかるかは学校・チームによって 大きく異なり、一般論の金額はかえって誤解のもとになります。 具体的なことは、入部先の学校・チームに直接確認してください。
大会を見に行く
大会の会場は、まっすぐな直線コースです。距離は高校で2000m、 中学で1000mが基本。スタート地点は観客席から遠く離れているため、フィニッシュ付近がいちばん見やすい場所です。レースそのものは 数分で終わるので、双眼鏡があると序盤から表情まで追えます。
自分の子の艇は、レーン(コースの割り当て)とバウナンバー(艇の先端に立てる、レーン番号を書いた札)で見分けます。出漕表(プログラム)でレースの時刻とレーンを確認しておくのが 確実です。1xや4x+といった艇種の記号の読み方は艇と用具の名前を覚えるに、 選手側の当日の一日は初めての大会に、 主要な会場の様子はレガッタ会場ガイドに まとめてあります。
一つだけ、応援のルールを知っておいてください。2024年4月版の競漕規則では、 許可なくレース中の艇にコース沿いで伴走すること(車や自転車を含む)、そして 拡声器などの電気式の機器を使った応援が禁止されています。違反すると、 応援した側だけでなく選手側のペナルティにつながることがあります。 決められた応援場所で、声で応援するのが基本です。声は水の上まで 届いています。
写真や動画を撮るときは、他の家庭のお子さんも一緒に写ることを忘れずに。 撮影した写真の共有や公開は、チームの方針に従ってください。