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ドリル図鑑
練習ドリルを、直したいこと(目的)と場所から引けます。やり方と、何が直るのかを添えました。
ドリルとは、ローイングの全体動作から一部分だけを取り出して行う 練習(分習)のことです。動かす部位と範囲を限定することで、ふだんの 漕ぎでは流れてしまう感覚を確かめられます。目的と場所で絞り込み、 気になるドリルを開くと、やり方・何が直るか・よくある失敗が読めます。
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腕漕ぎ(うでこぎ)
arms only rowingスライドも上体も使わず、腕の曲げ伸ばしだけで漕ぐ。フィニッシュまわりのハンドル操作を取り出して練習する、部分漕の基本です。
両方・フィニッシュ・順序
やり方
- シート(座席)を動かさず、上体も前後に振らずに、腕だけで漕ぐ。
- ハンドルは指で吊るように持ち、腕の重さをかけて艇を運ぶ。
- フィニッシュはフェザー(ブレードを水面と平行に寝かせる動き)に頼らず、クリアに抜く。
- クルー艇では、フォアならペアだけ、エイトならフォアだけで行うと艇が安定する。
何が直るか
- キャッチとフィニッシュのハンドル操作
- 「ハンドルを動かす」のではなく「艇を動かす」感覚
- フェザーに頼らないクリアなリリース
よくある失敗
- ドライブ後半で水を逃がし、ハンドルだけ引く癖がそのまま出る
※腕だけで漕ぐのが基本ですが、フィニッシュの確認として少しだけ脚や上体を使う流儀もあります。
出典: Concept2、Hydrow
上体漕ぎ(じょうたいこぎ)
rowing without slide / arms and bodyスライドを使わず、上体のスウィング(前後の振り)と腕だけで漕ぐ。ストローク後半の順序と姿勢を作ります。
両方・順序・フィニッシュ
別の呼び名: ボディ漕ぎ、ノースライド
やり方
- スライドを使わず、上体の振りと腕だけで漕ぐ。
- エルゴメーターでは、脚と腕を伸ばして上体をやや前に倒した姿勢から、上体を後ろへ振り、続けて腕を引く。
- 15〜20本を目安に、通常の漕ぎに戻す。
何が直るか
- 上体と腕の連携
- ストローク後半(上体の振りから腕の引き)の順序と姿勢
- 脚は「腕が伸び、上体が前に出てから」動くという順序の理解
資料には「腰に負担がかかりやすいので長時間続けない」との注意があります。違和感が出たら中止し、指導者に相談してください。
出典: Concept2、Hydrow
ハーフスライド
half slide rowingスライドを半分だけ使って漕ぐ。腕漕ぎからフルスライドへ広げていく途中の一段です。
両方・順序・リズム
別の呼び名: 50%スライド
やり方
- スライドを半分だけ使って漕ぐ。
- 上体の準備(前傾)をいつもより早く済ませ、短い脚のドライブで腰から押す。
- 組み合わせの例: ハーフスライド8本、脚漕ぎ8本、フルスライド8本の順に回す。
何が直るか
- 早めのボディプレップ(上体の準備)
- ドライブ前半の腰の使い方
- リカバリーの制御
よくある失敗
- 動く範囲が短いぶんレートが跳ね上がり、リカバリーが焦る
出典: row2k(コーチ聞き取り)
フィニッシュ・ドリル
pick drill / finish drill腕漕ぎから始めて、上体、ハーフスライド、フルスライドと動作を段階的に広げていく組み立て練習。フィニッシュ側から作ります。
両方・順序・フィニッシュ
やり方
- 腕漕ぎから始める。
- 上体のスウィングを加える。
- ハーフスライドに広げる。
- フルスライドに広げ、最後にフェザーを加えて通常の漕ぎに戻す。一般にノーフェザーで行うとされる。
何が直るか
- フィニッシュからリカバリーまでを正確に滑らかに動かすこと
- ストロークの正しい順序
よくある失敗
- 各段階を形だけなぞってしまう。段階ごとに何を確かめるかを決めてから始める
※英語では pick drill。資料によっては、キャッチ側から組み立てる方をこの名前で呼ぶことがあります。このサイトでは「フィニッシュ側から=フィニッシュ・ドリル」「キャッチ側から=キャッチ・ドリル」で統一します。
出典: Concept2
キャッチ・ドリル
reverse pick drill / catch drillキャッチ側から動作を組み立てる段階練習。入水だけの動きから始めて、脚、上体、腕へと広げます。
両方・順序・キャッチ
別の呼び名: キャッチの振込み、リバースピック
やり方
- トップスライド(いちばん前)で前傾し、腕を伸ばした姿勢を作る。
- その姿勢のまま、キャッチ(入水)の上下動作だけを繰り返す。
- レッグドライブでスライドを10cmほど動かす段階に進み、水の引っ掛かりを感じる。
- 腕を伸ばしたまま、フルスライドの脚漕ぎに広げる。
- 上体のスウィングを加え、最後に腕を引いて通常の漕ぎに戻す。
何が直るか
- フォワード終盤で正確に水をとらえること
- 滑らせずにドライブを始めること
- 腕や上体で引いてしまう癖
よくある失敗
- 入水前に腕や上体から引き始める
- 最初の「入水だけ」の段階を飛ばすと、水の引っ掛かりを感じ取る段階が抜ける
※英語の reverse pick drill にあたります。資料により pick drill と呼び方が逆のことがあります。
出典: row2k(コーチ聞き取り)
脚漕ぎ
legs only rowing前傾して腕を伸ばしたまま、脚のドライブだけで漕ぐ。キャッチで水をつかんでから押す順序を体に入れます。
両方・キャッチ・つながり
やり方
- 前傾して腕を伸ばしたまま、キャッチから脚が伸びるところまでだけを漕ぐ。
- 肩は腰よりスターン側(漕手が向いている側)に残す。
- エルゴメーターでは、キャッチ姿勢から上体を固定し、脚だけで押す。15〜20本が目安。
- クルーでの進め方の例: 整調ペアが脚だけで5本、脚+上体で5本と漕ぎ、ペアを加えながら繰り返す。
何が直るか
- キャッチの入水タイミングとシートの方向転換の一致
- いちばん大きな筋群である脚の使い方
- 「ブレードを置いてから押す」順序
よくある失敗
- ブレードが水中に固定される前に押してしまい、体は動くのに艇は動かない
- 肩が腰よりバウ側(背中側)に出る
※初心者にはスクエアブレード(フェザーしないまま)で行うことを勧める資料もあります。
出典: Faster Masters Rowing、Concept2、Hydrow、row2k(コーチ聞き取り)
レッグス・アンド・ボディ
legs and back (body) only腕を使わず、脚のドライブと上体のスウィングだけで漕ぐ。ドライブのつなぎ目を滑らかにします。
両方・順序・つながり
やり方
- 腕を伸ばしたまま脚で押し、続けて上体のスウィングを加える。腕は最後まで使わない。
- 誇張した形では、脚を完全に使い切ってから上体を振る。
- 変形の例: 脚だけ10本と、脚+上体10本を交互に行う。
- 段階を踏む例: 脚だけ数本(リリースで止める)、かかとが着いたらすぐ上体を加える、ドライブ最後の3分の1で腕を加える、最後に止めを外して連続で漕ぐ。
何が直るか
- レッグドライブから上体の振りへの移行
- ドライブの「つなぎ目」を滑らかにし、急加速のむだをなくすこと
よくある失敗
- つなぎ目で腕を急に引いてしまう
- ストレッチャー・ピン・ブレードへの圧が途切れる
※「脚を使い切ってから上体」はドリル用の誇張です。実際の漕ぎでは、脚・上体・腕はわずかに重なりながら滑らかにつながるとされています。
出典: Faster Masters Rowing、Jersey Rowing Club、row2k(コーチ聞き取り)
クォータースライド
quarter slide push / top quarterスライドの最初の4分の1だけで漕ぐ。動く範囲が短いぶん、前端の正確さがそのまま問われます。
両方・キャッチ・つながり
やり方
- キャッチから、スライドの最初の4分の1だけを使って漕ぐ。
- 変形: ゆっくり行い、インサイドハンドをシートの後ろに当てて、シートが止まる瞬間を確かめる。
- スライド上端の6インチ(約15cm)だけで漕ぐ形もある。スライドがスターンへ動き始めたらブレードは水へ。スライドの最後のひと転がりで入水が終わっているのが目安。
何が直るか
- ドライブの前に水をつかむこと
- キャッチのタイミングとシートの方向転換の同期
- 前端の精密さ
よくある失敗
- リカバリーでは「ハンドルはシートより速く動く」。ここを理解していないと入水が遅れる
出典: Faster Masters Rowing、row2k(コーチ聞き取り)
ポーズ・ドリル
pause drillリカバリーの途中で止まり、姿勢と順序を確かめる。国内外の資料でもっとも広く紹介されているドリルです。
両方・順序・リズム
別の呼び名: 1ポーズ・ドリル、2ポーズ・ドリル
やり方
- 2ポーズ: フィニッシュのあと、ハンズアウェイが終わった姿勢で止まり、上体を前傾してもう一度止まる。これを丁寧に繰り返す。
- 1ポーズ: 前傾を作り終えた位置の1回だけ止める。
- 標準の流れは、2ポーズから1ポーズ、そして通常のストロークへ。
- 海外の例: フィニッシュ・ハンズアウェイ・ボディオーバーの3点で2〜3秒ずつ止める。止める位置を5本ごとに順に回していく形もある。
何が直るか
- リカバリー前半の前傾を正確に作ること
- 脚・体・腕の順序の確認
- クルーの同調とリズム
よくある失敗
- ポーズ中に上体や肩が動く
- ピン(オールの支点)への圧が抜けて艇が不安定になる
※どこで何回止めるかは資料やチームによって異なります。2点・3点・4点など複数の流儀があります。
出典: Concept2、Hydrow、Jersey Rowing Club、row2k(コーチ聞き取り)
ロック・アンド・ロウ
rock and row合図に合わせて「前傾を作る」と「スライドして漕ぐ」を分ける。リカバリーの順序を音で覚えます。
水上・順序・リズム
やり方
- ハンズアウェイで止まる。
- 合図「ロック」で骨盤を回して前傾を作る。
- 合図「ロウ」でスライドし、エントリーからドライブへ。
何が直るか
- フィニッシュ後に脚・体・腕が同時に動き出す癖
- リカバリーの順序
- チームボートのリズム作り
※失敗例の記載は資料にありません。ポーズ系と同じく、止まっている間に姿勢を崩さないことを意識します。
出典: Jersey Rowing Club、row2k(コーチ聞き取り)
1本漕ぎ・2本漕ぎ
single strokes / rusties艇を惰性で走らせ、合図で1本だけ集中して漕ぐ。落ち着いた雰囲気の中でキャッチとドライブのタイミングを磨きます。
水上・キャッチ・リズム
やり方
- 艇を漕がずに走らせ、惰性で走っている間に舵手(いなければ1人の漕手)が合図を出す。
- 合図でゆっくりフォワードし、フルプレッシャーで1本だけ漕ぐ。
- 艇が走る感触を味わい、落ち着いたらまた合図。慣れたら2本漕ぎに移る。
- 変形: リリースで止めて前傾し、リリース位置へ戻して1本のフルストローク。1本、2本、3本と増やしていく形もある。
何が直るか
- キャッチとドライブのタイミング
- キャッチの体角
- リカバリー中の脚の脱力
よくある失敗
- フォワードが雑になる。フォワードは緩やかに、ストロークは集中して力強く
※米国などでは rusties と呼ばれることがあると用語集にあります。
出典: Faster Masters Rowing、British Rowing、row2k(コーチ聞き取り)
スローモーション
slow motion rowingごくゆっくり動きながら、動作の各部分を知覚する。そこから少しずつ速度を上げ、イメージを保ったまま通常の漕ぎへつなげます。
水上・順序・リラックス
やり方
- 一般的なノーワークよりさらに遅く動作する。
- きわめてゆっくり、連続的に動作の速さを上げ、ノーワークからハイプレッシャーまで増速する。
- その過程で、理想のイメージをできるだけ保ち続ける。
何が直るか
- 動作の各部分を落ち着いて知覚すること
- イメージと実際の動作の一致
※国内で知られるドリルで、今回参照した海外資料には同名のものが見当たりませんでした。
ノーフェザー
square blade rowing / no featherフェザーせず、ブレードを立てたまま漕ぎ続ける。リリースの高さとブレードの軌跡を単純化して確かめます。
両方・フィニッシュ・ブレードワーク
別の呼び名: スクエア・ブレード
やり方
- フェザーせず、スクエア(ブレードを立てた状態)のまま漕ぐ。
- 慣れないうちは、スクエア5本とフェザー5本の交互から始める。
- 現行の大きなブレードでは、抜き上げてやや高めにリリースし、ハンズダウンからキャッチまでは少し低めのハンドルワークにするコツが伝えられている。
何が直るか
- フィニッシュで適切な高さまでブレードを上げるリリース
- リカバリーでのブレード軌跡の単純化と、フライアップの防止
- 手首を使わず前腕でリリースする習慣
- 水を最後まで押し切るフィニッシュ
よくある失敗
- スクエアのままのスライドでバランスが崩れ、水を引っかけながらエントリーしてしまう
- 現行の大きなブレードは、昔の細長いブレードより難しい
※スクエアに返す位置(早めに返すか、キャッチ直前か)は流儀の差が大きく、ここでは断定しません。
出典: British Rowing、Jersey Rowing Club
タップダウン&フェザー
tap down and feather止まった艇の上で、フィニッシュの抜きとフェザーだけを繰り返す。手首を使わないリリースの練習です。
水上・フィニッシュ・バランス
やり方
- 艇を止め、バックストップス(フィニッシュの姿勢)から始める。
- ハンドルをタップダウン(軽く押し下げてブレードを抜く)し、ハンズアウェイまで出す。
- スカルでは左手がリードする。手首はフラットに保つ。
- チャレンジ: ブレードを水に触れさせずに3回連続で行う。クルーでも同じ。
何が直るか
- フィニッシュの精密さ
- 手首を使わないリリース
- 静止時のバランス
よくある失敗
- 手首でブレードを抜こうとする
※前腕を肘から折る動きでまずブレードを半分だけ抜き、安定したら全部抜く、と段階を分ける教え方もあります。
出典: British Rowing、Jersey Rowing Club
振込み(ふりこみ)
roll ups / roll up and place止まった艇からリカバリーだけを行い、ブレードをまっすぐ水中に置くところまでを丁寧に作ります。
水上・キャッチ・ブレードワーク
別の呼び名: ロールアップ
やり方
- 艇を止め、バックストップスから始める。
- フェザーのまま、きれいに制御されたリカバリーを行う。
- スクエアに返して入水するところまでを丁寧に行う。
- チャレンジ: ブレードを水から離したまま3回。クルーなら、全員の入水音が1つに聞こえる「ワンキャッチ」を目指す。
何が直るか
- キャッチの入水動作そのもの
- フォワードからまっすぐ水中に落とすブレードワーク
※失敗例の記載は資料にありません。キャッチ・ドリルの入水段階と同じく、腕や上体から引き始めないことを意識します。
出典: British Rowing
カット・ザ・ケーキ
cutting the cake漕ぐ前にフィニッシュと前傾の間で「空振りの往復」を挟む。リカバリーの脱力と流れを作ります。
水上・リズム・リラックス
やり方
- フィニッシュの姿勢から、上体を前に倒す。
- 漕がずに、もう一度フィニッシュの姿勢へ戻る。この空振りの往復を挟む。
- そのまま前へ出て、通常のストロークを漕ぐ。
何が直るか
- スウィングと体の準備
- フィニッシュで手が一緒に出ること
- リカバリーで艇を走らせること
- リカバリーの脱力と流れ
よくある失敗
- 往復の速さが人によってばらつく。クルーでは、全員が同じ速さで動き、膝が一緒に折れているかを見る
出典: British Rowing、row2k(コーチ聞き取り)
チャボリ
jab row止まった艇の上で、左右のブレードを同時に抜き上げては落とす。腕の上下だけでバランスを保つ練習です。
水上・バランス・操艇
別の呼び名: チャブロー、ジャブロー
やり方
- 艇を止め、キャッチとフィニッシュの2つの姿勢で行う。
- 左右のブレードを同時に水から抜き上げ、また落とす。これをゆっくり繰り返す。
- 上体と脚は艇の中心で安定させ、不用意に動かさない。腕の上下動だけでバランスを保つ。
何が直るか
- バランスの習得
よくある失敗
- 上体や脚でバランスを取ろうとする
※チャボリ・チャブロー・ジャブローの呼び分けは「クラブによって違い、どれが正統ということもなさそう」と用語集自身が書いています。停止中の艇の向きを保つ・直すための動作を指す使い方もあり、英語圏では通じない可能性が指摘されています。
アップ・ダウン
up-down drill / waggle左右のハンドルを交互に上下させて、わざと艇を揺らす。ハンドルの高さと艇の傾きの関係を体で覚えます。
水上・バランス
別の呼び名: ワグル、ワッグル、WAG運動、リフト・アンド・ロワー
やり方
- 艇を止める。
- ハンドルをサイドごとに交互に一斉に上下させ、艇を左右に揺らす。
何が直るか
- ハンドルの上下がそのまま艇の傾きになることの体感
- バランスの確認
※呼び名のゆれが大きいドリルです。「アップ・ダウン」と呼ばれることもあります。
スタンディング
standing drill両舷のブレードを同時に空中へ上げ、そのまま静止する。チャボリやワグルの応用で、資料に「中級以上」と明記されています。
水上・バランス
やり方
- 艇を止め、フィニッシュ、ミドル、キャッチの順に姿勢を作る。
- 両舷のブレードを同時に上げて、そのまま静止する。
- 上体を揺らさず、上がったサイドのハンドルを抑えてバランスを安定させる。
何が直るか
- 空中でブレードを止めたままバランスを保つ力
※中級以上のドリルとされています。順番としてはチャボリやワグルの後です。
アイズ・クローズド
eyes closed rowing目を閉じて漕ぐ。視覚に頼らず、艇の走りとリズムを体で感じるためのドリルです。
水上・リズム・リラックス
やり方
- クルー全員がそろって漕げるようになった段階で行う。
- 目を閉じて漕ぎ、艇の走りと水音、リズムを感じる。
何が直るか
- 視覚に頼らないリズムの内在化
- ブレードを見てしまう癖
- 気が散る要素を減らすこと
実施するかどうか、どんな水域・条件で行うかは、指導者・コックスの判断のもとで決めてください。
出典: British Rowing、row2k(コーチ聞き取り)
フィートアウト
feet out rowing靴から足を出して漕ぐ。足が浮かない範囲を探ることで、ドライブの適切な終わりとフィニッシュ姿勢がわかります。
両方・フィニッシュ・つながり
やり方
- 靴(クロッグ)から足を出し、足を乗せたまま漕ぐ。
- 脚・背中・腕の引きが同時に終わるよう意識し、脚と背中が終わると同時にリリースする。上体がバウ側へ倒れすぎない範囲を探る。
- エルゴメーターでは、ストラップを外すか、より安全にはゆるめて、通常のフルストロークをそっと漕ぐ。フィニッシュでどこまでレイバックすると足が浮くかを探る。
何が直るか
- ストレッチャー・ピン・ブレードへの圧を一定に保つこと
- ドライブの適切な終わり(リリース点)を知ること
- フィニッシュでシートに残る感覚
よくある失敗
- 足が浮く。約0.5インチ(約1.3cm)までの浮きは許容し、それ以上は技術の崩れのサインとする資料がある
- エルゴでは後ろへ倒れる恐れがあるため、最初の数本はとくにそっと行う
背中に違和感が出る人がいるという記載もあります。違和感があれば中止し、指導者に相談してください。
出典: Jersey Rowing Club、British Rowing、Hydrow、row2k(コーチ聞き取り)
ノーハンドル・ローイング
no handle rowingハンドルを持たずに動きだけで漕ぐ。マシンや艇のリズムに自分を同調させる練習です。
両方・リズム
やり方
- エルゴメーター(ダイナミック型が向くとされる)でハンドルを置き、パワー相で押しながらスライドを転がす。マシンのリズムに同調して動く。
- 慣れたらハンドルを持ち、脚の使い方を保ったまま腕の引きを加えていく。
- クルーボート版: 半分の漕手が座り、残りがハンドルを押し出してオールを舷と平行に保ったまま滑走する。
何が直るか
- レシオ(ドライブとリカバリーの時間の比)とリズム
- スライドを焦って前に出る癖
※単一の資料(Faster Masters Rowing)によるドリルです。
出典: Faster Masters Rowing
ワイドグリップ
wide grip / ultra-wide gripいつもより広く握って漕ぐ。負荷が増すぶん、キャッチでの「つかみ」の接続がはっきり感じられます。
水上・キャッチ・つながり
やり方
- スイープ(一人1本のオール)では、インサイドハンドをシャフト側へ大きく下げて握り、長いストロークを漕ぐ。
- スカル(両手に1本ずつ)では、グリップのゴムの端またはシャフトを握り、その手でオールを入水させる。
- 上達に合わせて手を通常の位置へ少しずつ戻す。戻したあとも、ドリル中に得た長さを再現する。
何が直るか
- キャッチでの「つかみ」の接続
- スイープでは前端のレンジを伸ばし、ピンの周りを回って長く入れる感覚
よくある失敗
- インサイドアームが突っ張っていると、ピン周りの回転が完成しない
出典: Faster Masters Rowing、Jersey Rowing Club
アウトサイドハンド・オンリー
outside hand (arm) onlyスイープ限定。ハンドルの端を握るアウトサイドハンドだけで漕ぎ、全局面の感触と接続を磨きます。
水上・キャッチ・フィニッシュ
やり方
- スイープで、インサイドハンド(オールの先に近い側の手)を離し、アウトサイドハンド(ハンドルの端を握る手)だけで漕ぐ。
- フィニッシュ・ドリルやキャッチ・ドリルを、アウトサイドハンドだけ・スクエアのままで行う形が紹介されている。
- 見るポイント: ハンドルの上げ下げは手首や肘ではなく肩から。入水直後からぶら下がる。脚・背・腕の順序。ハンドルが胸まで直線で運ばれること。
何が直るか
- 全局面の感触と接続
- クリーンな入水と離水
よくある失敗
- 手首や肘でハンドルを上下させる
- フィニッシュでハンドルが膝の上に落ちる
- ウォッシュアウト(ドライブ中にブレードが水から出てしまうこと)
※アウトサイドハンドはスイープの動きの約9割を担う、と紹介したコーチもいます。
出典: row2k(コーチ聞き取り)
インサイドハンド・オンリー
inside hand (arm) onlyスイープ限定。フェザーを担うインサイドハンドだけで漕ぎ、返しのタイミングを覚えます。
水上・ブレードワーク
やり方
- スイープで、アウトサイドハンドを離し、インサイドハンドだけで漕ぐ。
- 変形: アウトサイドハンドをバックステイ(リガーの支柱)に置いて行うと、オールロックを中心とした回転を学べる。
何が直るか
- フェザーのタイミング
- キャッチでの脚への荷重
出典: Faster Masters Rowing、row2k(コーチ聞き取り)
シングルレッグ
single leg (one leg) rowingエルゴメーターで片方の脚だけで漕ぐ。左右の脚の強さと使い方の差を見つけて直します。
エルゴ・左右差
やり方
- 片足をストレッチャーから外して床に置き、もう片方の脚だけで漕ぐ。
- 10〜15本を目安に、頻繁に左右を交代する。
何が直るか
- 左右の脚の強さ・使い方の差の発見と矯正
- 膝がまっすぐ上下する脚の軌道
よくある失敗
- 膝が内外に揺れる
出典: Hydrow
低レート漕(ていれーとそう)
low rate rowing / sub 10レートを抑えて漕ぎ続け、ワンストロークで進む距離(DPS)を伸ばす。低いレートは全局面の精密さを要求します。
両方・リズム・つながり
やり方
- レートを抑えて漕ぎ続け、一漕ぎでできるだけ艇を動かす。
- 指定の例: ジュニア合宿でレート24前後、シニアで20(2002年の講習記録にある値。目安であり、チームの指示が優先)。
- 極端な低レート版として、レート10未満で一定時間漕ぐ形もある。
何が直るか
- 同じ艇速をより低いレートで出すこと
- リリースからリカバリー、エントリー、ドライブへの流れ。ポーズやジャークをなくすこと
よくある失敗
- いつの間にかレートが上がってしまう
※国内資料では「DPS(Distance per Stroke。一漕ぎで進む距離)を伸ばそう」という練習指示として登場します。
出典: Jersey Rowing Club
分漕(ぶんそう)
rowing by pairs / add a pairクルー艇の一部のポジションだけで漕ぎ、残りはバランスを取る。多くのドリルの土台になる進め方です。
水上・バランス・つながり
別の呼び名: ペアワーク、フォアワーク
やり方
- クルー艇で、一部のポジションだけで漕ぐ。残りの漕手はバランスを取る。
- 進め方の例: 2人、4人、6人、全員と順に増やす。整調ペアから5本ずつドリルを行い、ペアを追加していく形もある。
- バランスを取る側のコントロールの強さは、目的に応じて変える。
何が直るか
- ウォーミングアップ
- バランスが不安定なときの調整、リギングのチェック
- ペアが加わるたびに変わる艇速へ、接続とリズムを合わせ直すこと
バランスを取る時間が長すぎると体が冷えます。資料も「長くやり過ぎない」と注意しています。寒い時期はとくに配分に気をつけてください。
出典: row2k(コーチ聞き取り)
バッキング
backing後ろ向きに漕ぐ。操艇の技術と、水がブレードに「掛かる」感覚の両方が身につきます。
水上・キャッチ・操艇
やり方
- シングルで、フルスライドのバッキング(後ろ漕ぎ)を行う。ブレードはスクエア、裏返し、片方ずつなどのバリエーションがある。
- 別の形: フィニッシュ姿勢・脚フラット・ブレードスクエアから、ハンドルを押してバックする。
- 脚と手をリラックスさせたまま前端に近づくと、水がブレードをバウ方向へ引き、ハンドルが指先に掛かるのを感じる。そこから脚をドライブ前半のように押して繰り返す。
何が直るか
- 通常ストロークの体の順序と、クロスオーバー(左右の手が交差する位置)での手の位置
- 直進・ターン・着岸などの操艇技術
- 水がブレードを受け止めて「掴まる」感覚
よくある失敗
- 手や脚に力みがあると不安定に感じる
後ろ向きに進む練習です。実施の可否・場所・見張りは、指導者・コックスの判断で決めてください。
出典: row2k(コーチ聞き取り)、Jersey Rowing Club
サスペンションのドリル
suspension drillエルゴメーターで、体重をハンドルとストレッチャーに掛ける感覚を作る。パワーの出し方を確かめるドリルです。
エルゴ・つながり
別の呼び名: 懸架のドリル
やり方
- 始める前にストレッチャーの高さを調整して正しいポジションを確保し、負荷はできるだけ軽くする。
- Aタイプ: 脚を伸ばして上体を前傾した姿勢からファイナルまでを漕ぐ(股関節・体幹・背中・肩・腕の連結から出力する)。次に少しだけ脚のドライブを加え、最後にフルストロークで同じイメージを表現する。
- Bタイプ: キャッチの姿勢から脚が伸びきる所までの各部位の連動を作る。肩の動きを加えてドライブし、フルストロークへ。脚漕ぎとは意識する部分がまったく違う、と資料は明記している。
- Bタイプでは、股関節から前傾できているかを確かめる。
何が直るか
- 体重をハンドルとストレッチャーに掛ける感覚
- 股関節から始まる各部位の連結
- パワーの出し方の確認
よくある失敗
- 「脚だけ」で漕いでしまう。肩や背中まで使えていないことが多い、という観察が記録されている
※水上メニュー前のウォームアップとしても行われるドリルです。
ドリルは、目的の説明とセットで効く
国内では1999年から「目的の説明なしにドリルをやっても効果は期待 できない」と言われ続けています。資料が挙げる実施の要点は4つです。 何を確かめるためのドリルなのかを先に決めて、焦点を1つに限定する。 できるだけ静かな水面を選び、テーマ以外のことは喋らない。そして、 強く漕げなければ意味がないことを忘れない。
艇の上の技術は、艇を離れると落ちていきます。最初に失われるのは キャッチのタイミングだとされ、だからドリルは定期的に行うことが 勧められています。また、ドリルで行う「脚だけ」「腕だけ」の分離は 練習用の誇張です。実際の漕ぎでは、脚・上体・腕はわずかに重なり ながら滑らかにつながるとされています。
エルゴメーター(ローイングマシン)では、オールの扱いとバランスの 練習はできません。場所が「両方」のドリルでも、ブレードワークや バランスは水上でしか身につかない要素です。エルゴでは「体のパワーの 出し方の確認」に使う、と割り切るのが資料の勧めです。なお、上体漕ぎの 腰やフィートアウトの背中のように、体への負担に触れた記載がある ドリルには注意書きを添えました。違和感が出たら中止して指導者に 相談してください。腰まわりの考え方は「腰痛の予防」にまとめています。