こぎだし

GUIDE

競漕規則をやさしく — 初めてのレースで知っておく決まりごと

規則をぜんぶ覚える必要はありません。レースがどういう考え方で進むのか、そして知らないと困る数か所だけ。正式な判定は、いつでも最新の公式規則と大会要項が決めます。

・ 読了目安 6

おだやかな水面に、レーンを仕切る競漕用のマーカーブイが1本のロープに数珠つなぎで浮かび、手前から奥へ一直線に遠ざかっていく線画

まず、レースの形をつかむ

ボートのレースは、複数のクルーが横に並び、同じ距離を同時に漕いで着順を競います。 各クルーが進む道筋をレーンレースで各クルーに割り当てられる進路。番号で示されますと呼び、多くのコースではブイレーンの境目を示すためにコースに浮かべた目印で境目が示されています。自分のレーン番号は、出場が決まった段階で発表されます。

距離は大会によって違います。国際大会の標準は 2000m ですが、 国内には 1000m500m の大会もあります。 レーンの数も、国際規格のコースでおおむね 68 本と幅があり、 水域や大会の規模によって変わります。距離もレーン数も「自分の大会はどうか」を 要項で確かめるのが先です。

レース前に自分で確かめる四つ
  1. 1自分のレーン番号組み合わせの発表で決まります。当日に変更されることもあります。
  2. 2コースの距離2000m とはかぎりません。大会ごとに要項で決まっています。
  3. 3招集と発艇の時刻招集=レース前の点呼。発艇=レースのスタートのこと。
  4. 4バウナンバーの付け方バウナンバー=艇の先端に付ける番号札。付け忘れは出場に関わります。

スタートとフィニッシュ

スタートは、艇を発艇地点にそろえ、合図で一斉に出ます。合図の出し方(かけ声や 表示灯、艇尾を保持する装置の有無)は大会によって異なるので、初めての大会では 「どの方式か」を必ず事前に指導者と確認してください。

合図より先に出てしまうことをフライングスタートの合図より前に漕ぎ出してしまうことと言います。一般には、まず警告を与え、繰り返した場合にはそのレースから 除外されうる、という考え方が採られています。ただし、何回で除外か、どの動きが フライングにあたるかといった条件は規則と大会要項で定められており、 判断するのは審判です。ここで細かい条件を覚えるより、合図を聞いてから出るという当たり前を体に入れるほうが確実です。

フィニッシュは、艇の先端(バウ)がフィニッシュラインを越えた順で決まるのが一般的です。 漕手の体ではなく艇の先端で判定されるため、最後の一本まで艇を進めることに意味があります。

勝ち上がりの考え方

出場するクルーが多いと、一度のレースでは決着しません。そこで、段階を分けて 勝ち上がる仕組みが使われます。名前は難しく見えますが、考え方は単純です。

勝ち上がりの段階
  1. 1予選出場クルーを組に分けて行う最初のレース。上位が次に進みます。
  2. 2敗者復活戦予選で敗れたクルーに、もう一度上へ進む機会を与えるレース。
  3. 3準決勝決勝に進むクルーを絞り込む段階。ない大会もあります。
  4. 4決勝順位を決める最後のレース。A決勝・B決勝と分かれることもあります。

何位までが次に進めるか、敗者復活戦があるかどうか、準決勝を挟むかどうかは、 出場数と大会の規模によって変わります。ここは大会ごとに違うので、 プログラム(要項)に載っている勝ち上がりの図を、自分のクルーの分だけ追えば十分です。

反則・失格になりうること

ここからは、どの規則にもだいたい出てくる代表的な事柄です。細かい条件や罰則は規則と大会要項で定められており、最終的に判断するのは審判です。この記事で覚えるのは「こういう観点がある」までにして、断定はしないでおきましょう。

  • フライング。合図より先に出てしまうこと。扱いは規則と要項によります。
  • コース侵害(自分のレーンを外れること)。自分の進路から外れ、他のクルーの進行を妨げた場合には、罰が科されることがあります。 扱いは、妨げが意図的だったのか、不注意によるものだったのか、 結果にどう影響したかによっても変わります。
  • 艇の要件を満たしていないこと。バウボール艇の先端に付ける白いゴム製の球。ぶつかったときの安全のための保護や、ヒールレストレイント転覆したときに足がシューズから抜けるように、かかとの動きを制限する仕組み、艇の浮力といった安全のための要件は、規則に定められています。装備の点検で 満たされていないと判断されれば、出場できないこともあります。
  • 時刻と登録の問題。招集に遅れる、申し込みと違うメンバーで出る、といったことも失格につながりえます。
  • 水上の指示に従わないこと。レース中もレース前後も、審判艇や運営の指示が最優先です。

安全のための艇の要件は、罰を与えるためではなく、事故が起きたときに人を守るために あります。艇と用具の名前そのものに不安があるなら、艇と用具の名前を覚えるを先に読んでおくと、点検の場面で話が通じやすくなります。

観る側にまわるときも、同じ地図が使える

レースを観るときも、見どころは同じところにあります。スタートで各艇がそろって出たか、 ゴール前でレーンから外れていないか、そしてどのクルーがどの段階まで勝ち上がってきたか。 この三つを知っているだけで、水の上で起きていることの意味がずいぶん変わって見えます。

観戦できる場所や立ち入れる範囲は会場ごとに決まっています。案内表示と係員の指示に従い、 コースや艇の通り道をふさがないようにしましょう。用語で引っかかったときは、用語辞典で調べれば、その場で追いつけます。

最後に — 規則は変わる

もう一度だけ繰り返します。規則は改定されます。国内の大会なら日本ローイング協会(JARA)が公開している競漕規則・細則、 国際大会なら World Rowing の Rules of Racing が、そのときの正式な条文です。 そして、その大会でどう運用されるかは要項と審判の指示が決めます。この記事で 覚えた考え方は、それらを読むための入り口として使ってください。

迷ったとき、水の上で判断に困ったときは、自分で抱え込まないこと。 指導者・主催者・審判に聞く。それが規則にいちばん忠実な行動です。