こぎだし

GUIDE

クルーの席と役割 — 整調・バウ・コックスは何をする人か

初めてクルー編成に自分の名前が載ると、自分がどこに座り、何を期待されているのかが気になります。席の数え方から、それぞれの席の役割、「上手い人はどの席?」という疑問まで、順番に見ていきます。

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まず、この3つだけ

まずこれだけ
  1. 1席はバウ側から数えるいちばん船首寄りのバウが1番。いちばんスターン寄りが整調です。
  2. 23つのまとまりで役割が違うリズムを作るスターン側、力の中核のミドル、艇を安定させるバウ側。
  3. 3席は順位表ではない求められるものが席ごとに違うだけで、上手さの序列ではありません。

席の数え方と呼び名

漕手そうしゅ=艇を漕ぐ選手は進行方向に背を向けて座るので、艇の「前」と「後ろ」を 体の向きで考えると混乱します。基準は艇です。進行方向の先端がバウ艇の進行方向の先端(船首)。いちばんバウ寄りに座る漕手のこともバウと呼ぶ、後ろ端がスターン艇の後ろ端(船尾)です。

席には番号があります。バウ側から1番、2番と数えていき、 いちばんスターン寄りの席がいちばん大きい番号です。エイトなら8番、クォドルプル4人で漕ぐスカル艇。記号は4xやフォアなら4番にあたります。

両端の席には、番号より呼び名のほうがよく使われます。 いちばん船首寄りの漕手がバウです。「バウ」は船首という場所と、 そこに座る漕手の両方を指す言葉です。いちばんスターン寄りの漕手がストローク、日本語では整調せいちょう。いちばんスターン寄りに座り、クルー全体のリズムを作る漕手と呼びます。中間の席は「2番」「7番」のように番号で呼ばれます。 編成表では、整調をS、バウをBの頭文字で書くこともあります。

進行方向
コックス舵手
整調8番
7番
6番
5番
4番
3番
2番
バウ1番
スターンペア
ミドル(中間の4人)
バウペア
エイト(8+)を上から見た配置。右がバウ(進行方向)で、漕手はスターン側(左)を 向いて座ります。スイープなのでオールは1人1本、互い違いです。

この呼び名は、練習の号令にもそのまま出てきます。コックスの点呼は バウ側から「バウ?」「2番?」と順に進みます。実際にどんな号令が 飛んでくるかは、コックスの号令集に まとめてあります。

スターン側・中間・バウ側 — 3つのまとまりで覚える

8つの席を一つずつ覚える必要はありません。クルーは3つのまとまりで説明されます。エイトなら、 整調と7番のスターンペア、6番から3番のミドル、 2番とバウのバウペアです。

スターンペアはリズムを受け持ちます。整調がクルー全体のリズムと レート(1分間に漕ぐ本数)を作り、ほかの漕手はその動きに合わせます。 この役割分担は、国内外の資料で同じように説明されています。隣の7番は、 整調の作ったリズムをバウ側の席へ伝える中継役です。

中間の4人は、艇を進める力の中核です。体力のある漕手が置かれることが 多い場所で、英語圏では「エンジンルーム」という愛称で呼ばれることも あります。ミドルがしっかり艇を進めるから、スターンペアはリズムを 整えることに集中できます。

バウペアは艇の安定を受け持ちます。バウ側は艇の動きが大きく出る 場所で、艇を水平に保ち(バランス)、まっすぐ進めることに深く 関わります。そのため、細かい技術が求められる席とされます。 まわりが見やすい席なので、気づいたことを声で伝える役目を 担うこともあります。

コックス — オールを持たない9人目

エイトは漕手8人とコックスオールを持たず、舵を取ってクルーに指示を出す人1人、合わせて9人で1つのクルーです。コックスの仕事は、舵を取って 艇をまっすぐ進めることだけではありません。レースの組み立てと指示、 そしてクルーを励ますことも受け持ちます。米国連盟の用語集は、 ここに安全への責任も挙げています。

漕手は後ろ向きに座っているので、前を見ているのはコックスだけです。 漕手はコックスの指示を信じて漕ぎます。だからコックスは、クルーからの 絶対的な信頼がないと務まらない席だと説明されます。

コックスはふつう艇のいちばんスターン側に座りますが、 バウ側に体を横たえるように乗る艇もあります。艇種の記号で+が付くものがコックスの乗る艇です。記号の読み方は艇と用具の記事に まとめてあります。

クォドやダブルでは、どうなるか

中学・高校の全国大会で漕ぐのはスカル種目です。エイトで説明してきた 役割の分担は、そのまま持ち込めます。人数が減っても、整調がリズムを 作り、中間の漕手が艇を進め、バウ側が艇を安定させるという考え方は 同じです。舵手付きクォドルプルなら整調が4番、中間が3番と2番、 そしてバウです。

進行方向
コックス舵手
整調4番
3番
2番
バウ1番
舵手付きクォドルプル(4x+)を上から見た配置。右がバウ(進行方向)。 スカルなので、1人が左右に1本ずつ、計2本のオールを持ちます。

コックスのいない艇(シングル・ダブル・舵手なしクォド)では、 コックスの仕事を漕手が引き受けます。コール(掛け声や指示)は バウが担うことが多く、舵は担当の漕手が足元のしくみ(靴につないだ ひも)で取ります。誰が舵を取るかは、艇やコース、漕手の経験に よって変わります。

「いちばん上手い人が整調」は、本当か

部にいると、「エースは整調」という言い方をいつか耳にします。 実際、海外のクラブの解説には「整調は艇でいちばん上手い漕手が 務めることが多い」とはっきり書くものがあります。だからこの通説は、 根も葉もない話ではありません。

ただ、同じ解説は、バウペアには技術のいちばん確かな漕手を、 ミドルにはいちばん力の強い漕手を置き、どのまとまりも等しく 大事だとも書いています。つまり、「上手さ」の中身が席によって 違うのです。リズムを作る上手さ、艇を進める強さ、艇を安定させる 技術。どれか一つの物差しで席が決まるわけではありません。

連盟の公式用語集に至っては、整調を「上手い人の席」とは説明して いません。書いてあるのは、リズムとレートに責任を持つ、という 役割だけです。

だから、席は順位表ではなく役割分担です。 誰をどの席に置くかは、一人ひとりの持ち味の組み合わせで決まります。 どの席に置かれたとしても、それは「この役割を任せたい」という 配置です。

サイドの話は、スイープに進んでから

スイープ(1人が1本のオールを両手で持つ漕ぎ方)に進むと、ここに 「自分のオールが左右どちらに出るか」というサイドの話が 加わります。バウサイドとストロークサイドという区別で、 スカルにはありません。中高でスカルを漕いでいる間は、 言葉だけ知っておけば十分です。詳しくは専門用語ミニ辞典で 引けるようにしてあります。

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