GUIDE
クルーの席と役割 — 整調・バウ・コックスは何をする人か
初めてクルー編成に自分の名前が載ると、自分がどこに座り、何を期待されているのかが気になります。席の数え方から、それぞれの席の役割、「上手い人はどの席?」という疑問まで、順番に見ていきます。
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まず、この3つだけ
席の数え方と呼び名
漕手(そうしゅ=艇を漕ぐ選手)は進行方向に背を向けて座るので、艇の「前」と「後ろ」を 体の向きで考えると混乱します。基準は艇です。進行方向の先端がバウ(艇の進行方向の先端(船首)。いちばんバウ寄りに座る漕手のこともバウと呼ぶ)、後ろ端がスターン(艇の後ろ端(船尾))です。
席には番号があります。バウ側から1番、2番と数えていき、 いちばんスターン寄りの席がいちばん大きい番号です。エイトなら8番、クォドルプル(4人で漕ぐスカル艇。記号は4x)やフォアなら4番にあたります。
両端の席には、番号より呼び名のほうがよく使われます。 いちばん船首寄りの漕手がバウです。「バウ」は船首という場所と、 そこに座る漕手の両方を指す言葉です。いちばんスターン寄りの漕手がストローク、日本語では整調(せいちょう。いちばんスターン寄りに座り、クルー全体のリズムを作る漕手)と呼びます。中間の席は「2番」「7番」のように番号で呼ばれます。 編成表では、整調をS、バウをBの頭文字で書くこともあります。
この呼び名は、練習の号令にもそのまま出てきます。コックスの点呼は バウ側から「バウ?」「2番?」と順に進みます。実際にどんな号令が 飛んでくるかは、コックスの号令集に まとめてあります。
スターン側・中間・バウ側 — 3つのまとまりで覚える
8つの席を一つずつ覚える必要はありません。クルーは3つのまとまりで説明されます。エイトなら、 整調と7番のスターンペア、6番から3番のミドル、 2番とバウのバウペアです。
スターンペアはリズムを受け持ちます。整調がクルー全体のリズムと レート(1分間に漕ぐ本数)を作り、ほかの漕手はその動きに合わせます。 この役割分担は、国内外の資料で同じように説明されています。隣の7番は、 整調の作ったリズムをバウ側の席へ伝える中継役です。
中間の4人は、艇を進める力の中核です。体力のある漕手が置かれることが 多い場所で、英語圏では「エンジンルーム」という愛称で呼ばれることも あります。ミドルがしっかり艇を進めるから、スターンペアはリズムを 整えることに集中できます。
バウペアは艇の安定を受け持ちます。バウ側は艇の動きが大きく出る 場所で、艇を水平に保ち(バランス)、まっすぐ進めることに深く 関わります。そのため、細かい技術が求められる席とされます。 まわりが見やすい席なので、気づいたことを声で伝える役目を 担うこともあります。
コックス — オールを持たない9人目
エイトは漕手8人とコックス(オールを持たず、舵を取ってクルーに指示を出す人)1人、合わせて9人で1つのクルーです。コックスの仕事は、舵を取って 艇をまっすぐ進めることだけではありません。レースの組み立てと指示、 そしてクルーを励ますことも受け持ちます。米国連盟の用語集は、 ここに安全への責任も挙げています。
漕手は後ろ向きに座っているので、前を見ているのはコックスだけです。 漕手はコックスの指示を信じて漕ぎます。だからコックスは、クルーからの 絶対的な信頼がないと務まらない席だと説明されます。
コックスはふつう艇のいちばんスターン側に座りますが、 バウ側に体を横たえるように乗る艇もあります。艇種の記号で+が付くものがコックスの乗る艇です。記号の読み方は艇と用具の記事に まとめてあります。
クォドやダブルでは、どうなるか
中学・高校の全国大会で漕ぐのはスカル種目です。エイトで説明してきた 役割の分担は、そのまま持ち込めます。人数が減っても、整調がリズムを 作り、中間の漕手が艇を進め、バウ側が艇を安定させるという考え方は 同じです。舵手付きクォドルプルなら整調が4番、中間が3番と2番、 そしてバウです。
コックスのいない艇(シングル・ダブル・舵手なしクォド)では、 コックスの仕事を漕手が引き受けます。コール(掛け声や指示)は バウが担うことが多く、舵は担当の漕手が足元のしくみ(靴につないだ ひも)で取ります。誰が舵を取るかは、艇やコース、漕手の経験に よって変わります。
「いちばん上手い人が整調」は、本当か
部にいると、「エースは整調」という言い方をいつか耳にします。 実際、海外のクラブの解説には「整調は艇でいちばん上手い漕手が 務めることが多い」とはっきり書くものがあります。だからこの通説は、 根も葉もない話ではありません。
ただ、同じ解説は、バウペアには技術のいちばん確かな漕手を、 ミドルにはいちばん力の強い漕手を置き、どのまとまりも等しく 大事だとも書いています。つまり、「上手さ」の中身が席によって 違うのです。リズムを作る上手さ、艇を進める強さ、艇を安定させる 技術。どれか一つの物差しで席が決まるわけではありません。
連盟の公式用語集に至っては、整調を「上手い人の席」とは説明して いません。書いてあるのは、リズムとレートに責任を持つ、という 役割だけです。
だから、席は順位表ではなく役割分担です。 誰をどの席に置くかは、一人ひとりの持ち味の組み合わせで決まります。 どの席に置かれたとしても、それは「この役割を任せたい」という 配置です。
サイドの話は、スイープに進んでから
スイープ(1人が1本のオールを両手で持つ漕ぎ方)に進むと、ここに 「自分のオールが左右どちらに出るか」というサイドの話が 加わります。バウサイドとストロークサイドという区別で、 スカルにはありません。中高でスカルを漕いでいる間は、 言葉だけ知っておけば十分です。詳しくは専門用語ミニ辞典で 引けるようにしてあります。