こぎだし

GUIDE

パラローイング入門 — クラス・種目・用具の基本を知る

パラローイングは、ボート競技の外側にある別の競技ではなく、ボート競技そのもののひとつの姿です。クラス分けの考え方、艇と用具の違い、そして最初の問い合わせまでを、公開されている一次資料をたどって整理しました。

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静かな水面に浮かぶ1人乗りスカル艇の側面図。手前側のリガーの先に安定用のポンツーン(浮き)が水面の上に取り付けられ、座席は固定シート。オールは左右2本。

まず、全体の形をつかむ

パラローイング障がいのある選手が出場するボート競技のことは、一般のボート競技と同じくWorld Rowing国際ボート連盟。世界のボート競技を統括する団体が統括しています。別組織が別のルールで運営しているわけではありません。 日本でも、日本ローイング協会が公開ページを持ち、その中で扱われています。

まずこれだけ
  1. 1ボート競技のひとつ統括団体は一般のボート競技と同じ World Rowing。日本では日本ローイング協会が扱っています。
  2. 2クラスは3つPR1・PR2・PR3。漕ぐ動作にどう影響するかで分かれる、という考え方です。
  3. 3用具で条件を揃える固定シート、ストラップ、ポンツーン。クラスごとに使う艇のつくりが違います。
  4. 4レースは2000m一般のボート競技と同じ距離。パラリンピックでは2008年の北京大会から実施されています。

クラス分けの考え方

クラス分け選手を出場区分に分けるしくみ。英語では classificationは、選手をふるい分けるための制度ではありません。World Rowing は公開資料で、 クラス分けの目的を「障がいがレースの結果に与える影響をできるだけ小さくし、 勝敗が障がい以外の要素で決まるようにすること」だと説明しています。 条件を揃えて、漕ぎそのもので競えるようにするためのしくみです。

クラスは3つ。World Rowing の公開情報では、次のように説明されています。

  • PR1 — 主に腕と肩の動きで艇を進めるクラスとして説明されています。
  • PR2 — 体幹と腕を使って漕ぐクラスとして説明されています。
  • PR3 — 脚・体幹・腕を使い、前後に動くシートを使って漕ぐクラスとして 説明されています。

ただし、この記事の説明で自分のクラスを決めないでください。実際のクラスは、World Rowing の公開情報によれば、 国際的なクラス分けの担当者(医学の担当者と、ローイングの技術の担当者)が、 可動域・筋力・協調性などを実際に評価して決めます。分類の基準は更新される ものでもあります。正確なところは、必ずWorld Rowingと日本ローイング協会の公式情報を確認してください。

艇と用具の違い

パラローイングの艇は、特別な乗り物というより「同じシェル(競技用の艇)に、 乗り方を合わせるための部品が付いたもの」と考えると分かりやすいです。 公開情報で説明されている、主な違いは次の3つです。

  • 固定シート前後に動かない座席。脚でシートを滑らせずに漕ぐ— PR1・PR2で使われます。一般の艇は前後に動くスライドシートレールの上を前後に滑る座席。脚の力を使うためのしくみですが、ここが動かない形になります。PR3はスライドシートを使います。
  • ストラップ上体や脚を艇に固定するためのベルト— 上体を支えるために使われます。背もたれの付いたシートと 組み合わせる形も公開情報で説明されています。
  • ポンツーン艇の両側に取り付ける浮き。艇が転覆しないように支える— World Rowing の公開情報では、PR1では安定のために必ず付けるものとされ、 PR2では付ける場合がある、と説明されています。

レースで使う用具には、World Rowing が定める技術的な決まりがあります。 細部は更新されるので、大会に出る場合は、その大会の要項と公式の技術規則を 必ず確認してください。この記事は考え方の紹介までです。

始めるには、どこに聞くか

「どこの窓口に行けばいい」という一本道が、全国に一つあるわけでは ありません。艇庫や水域の設備、受け入れの体制はチームごとに違います。 だからこそ、調べるより、聞くほうが早いのがこの分野です。

出発点になるのは、日本ローイング協会の公開情報です。パラローイングについてのページがあり、そこから たどれる情報が最初の一歩になります。地域のクラブ・大学・高校が 体験の受け入れをしている場合もありますが、その有無や条件は 公式の案内で確認してください。この記事に具体的なクラブ名や連絡先は 書きません(古い情報を渡すことが、いちばんの遠回りになるからです)。

問い合わせる前に、手元で整えておくとよいこと

  • まず何をしてみたいか(一度体験したいのか、続けたいのか、競技として出たいのか)
  • 乗り降りや移動で、どんな支援があると助かるか(自分の言葉で構いません)
  • 通える範囲と、練習に出られそうな頻度
  • 付き添いの人が一緒に行けるかどうか
  • エルゴメーター(ローイングマシン)だけ試せる場所があるかも聞いてみる

決まった書式ではありません。うまく言葉にできなくても大丈夫です。受け入れ側と一緒に決めていける部分がほとんどです。安全や実施の可否についての最終的な判断は、現地の指導者・主催者の指示に従ってください。

艇庫で、どう振る舞うか

最後に、これから隣で漕ぐことになる人へ。難しい配慮の技術は要りません。 覚えておくとよいのは、二つだけです。

  • 手伝いが必要かどうかは、本人に聞く。艇や車いす、装具に、断りなく手を出さない。良かれと思って動くより、 一言かけるほうが確実です。
  • 「してあげる」ではなく、「一緒に漕ぐ」。クラス分けは大会に出るためのしくみであって、艇庫での立場を 分けるものではありません。同じ水面に出て、同じ2000mを漕ぐ相手です。

ボートは、体格も年齢も経験も違う人が、同じ艇の上で息を合わせる競技です。 パラローイングは、その幅がもう少し広いというだけのことです。