こぎだし

TECHNIQUE

エルゴのレート管理入門 — 数字の読み方から、1本の質へ

画面に並ぶ数字を、全部読める必要はありません。見るのは二つだけです。数字の読み方から、レート(1分間に漕ぐ本数)を自分で管理できるようになるまでを、順番に解説します。

読了目安6分レベル基礎公開日2026.07.13
室内用ローイングエルゴメーターを真横から見た線画。左に丸いフライホイールのカバー、上に無地のモニター、モノレール上のシートとチェーンでつながるハンドル。

エルゴメーター(ローイングマシン)に座ると、モニターにはたくさんの数字が並びます。 最初に覚えるのは、スプリット(500mを進むのにかかるタイム)と レート(1分間に漕ぐ本数)の二つだけです。

この二つの関係が分かると、「今日は何を良くする練習なのか」を 自分の言葉で説明できるようになります。まずは画面の読み方から始めましょう。

モニターは、二つの数字から

スプリットは「いまの勢いのまま進んだら、500mを何分何秒で漕げるか」を表す、 いわばエルゴの速度計です。数字が小さいほど速い。 レートは1本を回す速さそのものです。表示の一例を見てみましょう。

スプリット
2:10.5/ 500m
レート
20spm
表示の一例です。spm はレートの単位(strokes per minute)。数字そのものは体格・経験・その日の狙いで大きく変わります。

上の例が示すのは、「500mあたり2分10秒台の勢いを、1分間に20本で作っている」 という状態です。速さ(スプリット)と、それを何本で作っているか(レート)を 別々に読めることが、レート管理の出発点になります。

同じ速さでも、1本の重さは違う

同じスプリットでも、レートが違えば意味も違います。 レートが高ければ、1本あたりの仕事は軽くなります。レートが低ければ、 同じ速さを少ない本数で作っているので、1本は重くなります。

この「1本あたりにどれだけ進んだか」を、ここでは「1本の質」と呼ぶことにします。 低いレートで良いスプリットを出せる漕手は、1本の質が高い。 レースでレートが上がっても崩れないのは、この土台がある漕ぎです。

低レート練習で語られる帯
18–23spm
レース強度で語られる帯
28–36spm
英国の公開区分表(土台づくりの帯とレース強度に近い帯)で示されている幅を、レンジとして整理したものです。艇種・体格・クルー・指導方針で変わるので、チームの指定があればそちらを優先してください。

モニターの数字は、いまの1本を映す鏡です。

レートを一定に保つ練習

1本の質を作る練習として世界的によく使われるのが、低いレートで長く漕ぐ方法です。 UT(会話ができる程度の強さで、長い時間漕ぎ続ける練習。英語圏では steady state と呼ばれます)はその代表格です。低いレートで1本の出力を作り、 レートを上げても1本の質を保つ。この順番で組み立てるのが一般的な考え方です。

  1. 目標レートを一つ決める
    上の低レート帯から一つ。迷ったら低いほうから始める。
  2. まず、レートだけをそろえる
    スプリットは見ない。画面のレート表示が目標から動かないことだけを確認する。
  3. 次に、スプリットのばらつきを見る
    レートが安定してきたら、1本ごとのスプリットの振れ幅を小さくしていく。
  4. レートを少しだけ上げて、同じことを
    1本の質(1本あたりの進み)が変わっていないかを確かめながら繰り返す。

レートとスプリットは、同時にそろえようとしないこと。 先にレート、次にスプリットと順番を分けるだけで、画面に振り回されにくくなります。

漕ぎ終わったあとの振り返りには、ツールも使えます。500mごとのスプリットをスプリット/ペース分析に入れると、ペース配分の型(前半型か、後半型か、中盤で落ちたか)の目安が出ます。 レース本番の組み立てを先に考えるなら、目標タイムから区間ごとの目安スプリットとレートを出すレース戦略シミュレーターもあります。

ダンパーの数字が気になったら

エルゴの側面にあるダンパー(風の入り口の開き具合を変えるレバー)を 最大にして漕ぐ光景をよく見かけますが、開くほど1本が重い漕ぎ味になるだけで、 重いほど良い練習になるわけではない、というのが一般的な理解です。 そもそもエルゴや艇が戦っている「抵抗」の正体は、抗力と効率で掘り下げています。

次の練習で試すのは一つだけです。ウォームアップのあと、低いレートを一つ決めて、 時間を区切ってレート表示だけを見て漕いでみましょう。 スプリットを気にしなくていいと決めるだけで、意識は1本の質に向くはずです。