エルゴメーター(ローイングマシン)に座ると、モニターにはたくさんの数字が並びます。 最初に覚えるのは、スプリット(500mを進むのにかかるタイム)と レート(1分間に漕ぐ本数)の二つだけです。
この二つの関係が分かると、「今日は何を良くする練習なのか」を 自分の言葉で説明できるようになります。まずは画面の読み方から始めましょう。
モニターは、二つの数字から
スプリットは「いまの勢いのまま進んだら、500mを何分何秒で漕げるか」を表す、 いわばエルゴの速度計です。数字が小さいほど速い。 レートは1本を回す速さそのものです。表示の一例を見てみましょう。
上の例が示すのは、「500mあたり2分10秒台の勢いを、1分間に20本で作っている」 という状態です。速さ(スプリット)と、それを何本で作っているか(レート)を 別々に読めることが、レート管理の出発点になります。
同じ速さでも、1本の重さは違う
同じスプリットでも、レートが違えば意味も違います。 レートが高ければ、1本あたりの仕事は軽くなります。レートが低ければ、 同じ速さを少ない本数で作っているので、1本は重くなります。
この「1本あたりにどれだけ進んだか」を、ここでは「1本の質」と呼ぶことにします。 低いレートで良いスプリットを出せる漕手は、1本の質が高い。 レースでレートが上がっても崩れないのは、この土台がある漕ぎです。
モニターの数字は、いまの1本を映す鏡です。
レートを一定に保つ練習
1本の質を作る練習として世界的によく使われるのが、低いレートで長く漕ぐ方法です。 UT(会話ができる程度の強さで、長い時間漕ぎ続ける練習。英語圏では steady state と呼ばれます)はその代表格です。低いレートで1本の出力を作り、 レートを上げても1本の質を保つ。この順番で組み立てるのが一般的な考え方です。
- 目標レートを一つ決める上の低レート帯から一つ。迷ったら低いほうから始める。
- まず、レートだけをそろえるスプリットは見ない。画面のレート表示が目標から動かないことだけを確認する。
- 次に、スプリットのばらつきを見るレートが安定してきたら、1本ごとのスプリットの振れ幅を小さくしていく。
- レートを少しだけ上げて、同じことを1本の質(1本あたりの進み)が変わっていないかを確かめながら繰り返す。
レートとスプリットは、同時にそろえようとしないこと。 先にレート、次にスプリットと順番を分けるだけで、画面に振り回されにくくなります。
漕ぎ終わったあとの振り返りには、ツールも使えます。500mごとのスプリットをスプリット/ペース分析に入れると、ペース配分の型(前半型か、後半型か、中盤で落ちたか)の目安が出ます。 レース本番の組み立てを先に考えるなら、目標タイムから区間ごとの目安スプリットとレートを出すレース戦略シミュレーターもあります。
ダンパーの数字が気になったら
エルゴの側面にあるダンパー(風の入り口の開き具合を変えるレバー)を 最大にして漕ぐ光景をよく見かけますが、開くほど1本が重い漕ぎ味になるだけで、 重いほど良い練習になるわけではない、というのが一般的な理解です。 そもそもエルゴや艇が戦っている「抵抗」の正体は、抗力と効率で掘り下げています。
次の練習で試すのは一つだけです。ウォームアップのあと、低いレートを一つ決めて、 時間を区切ってレート表示だけを見て漕いでみましょう。 スプリットを気にしなくていいと決めるだけで、意識は1本の質に向くはずです。
