COACH
90分練習を組み立てる — 枠を持てば、中身は借りられる
練習メニューをゼロから発明する必要はありません。90分をどう割るかという枠を決めれば、中身は選手と経験者の知恵を借りられます。
・ 読了目安 6分
練習の骨組みは、どの部活も同じ
ボートの練習は特別なものに見えますが、骨組みはほかの部活動と変わりません。 準備して、練習して、片づけて振り返る。この三つの箱を90分の中に置くだけで、 練習は形になります。
箱の並びは毎回同じで、変わるのはまんなかの中身だけです。
90分の時間割を、一例から
枠のイメージをつかむために、時間割の一例を置きます。あくまで一例です。 艇を水に出す日は前後の準備と片づけがさらに膨らみますし、 日没や川までの移動時間でも大きく変わります。
- 0:00-0:15 集合・道具の準備・今日やることの説明
- 0:15-0:30 ウォーミングアップ(体を温める運動)
- 0:30-1:10 主練習
- 1:10-1:25 片づけ・道具の点検
- 1:25-1:30 一言ミーティング
まんなかの主練習に何を入れるかは、乗艇(実際に艇に乗って水の上で行う練習)の日なら経験のあるコーチや卒業生と、陸の日なら選手と相談して決めれば 十分です。同じ中身を数週間続けても構いません。距離や本数の「正解」を 探すより、枠が毎回同じであることのほうが、選手には効きます。
顧問は「見る係」になれる
練習中、経験のある指導者はレート(1分間に漕ぐ本数のこと)や距離といった数字を見ます。でも、数字が読めなくても見えるものが あります。選手の表情、動きの大きさ、練習全体の雰囲気です。
- 表情 — いつもより口数が少ない、笑わない。そうした変化は、 数字より先に表れます。
- 動き — 練習の後半、動きが目に見えて小さくなっている選手はいないか。
- 雰囲気 — 準備や片づけの負担が、特定の選手にばかり寄っていないか。
気づいたことは、その場で正そうとしなくて構いません。まず記録して、 あとで本人に「今日、少し疲れて見えた」と聞いてみる。それだけで、 選手にとって「見てくれている人」になります。
なお、体調や安全にかかわる判断は、この記事の範囲ではありません。 学校・連盟・地域の規定や講習が正式な基準です。ここに書いた「見る」は、 その手前にある日常的な心構えとして読んでください。
ビデオ係になる
「見る係」をもう一歩進めると、「撮る係」になれます。漕げない顧問に できる仕事のなかでも、ビデオ撮影は価値の高いものの一つです。 経験のあるコーチが毎回来られなくても、映像さえ残っていれば、選手は あとから何度でも自分の漕ぎを見返せます。撮り方のこつは、少しだけです。
- 基本は真横から — 岸と平行に進む艇を、真横(漕手に対して直角の 位置)から撮ります。一人をズームで追うより、艇全体が画面に入ることを優先してください。
- 数ストローク続けて — 一瞬ではなく、7–10本ほど 連続で撮ると、あとで一本ずつ見比べられます。
- ときどき真後ろ・真正面 — 左右の傾きや、ブレード(オールの水を かく部分)の高さの左右差は、艇の進む線の上から見るとよく分かります。
- 逆光を避ける — 太陽を背にして撮ると、体とブレードの輪郭が はっきり写ります。
見るときは欲張らず、次の三つだけを順に確かめます。スマートフォンのスロー再生 (コマ送り)が使えると、さらに見やすくなります。
映像には、フライアップ(リカバリー中にブレードが高く舞い上がる癖)や シートラッシュ(前へ戻る動きを急ぐ癖)のような名前の付いた癖も 写ります。用語の意味は用語辞典で調べられるので、選手と一緒に映像を見ながら引いてみてください。
役割分担だけは決めておきます。映像から「どう直すか」を診断するのは、 指導者と選手の仕事です。顧問は、あとから見える記録を残すことを受け持ちます。ここでも 「見る係」と同じで、その場で正さなくて構いません。撮ったあとの見方を 深掘りしたい選手には、フォーム動画の見方を渡してください。角度ごとに何が見えるか、静止画に基準線を引いて 確かめる方法までまとめてあります。
なお、動画の保存や共有は、チーム・学校の方針に従ってください。 顔が写る映像は個人情報でもあるので、部外への公開や共有は慎重に。
エルゴメーターの日を組み立てる
雨や増水で水の上に出られない日は、エルゴ(エルゴメーター=ローイングマシンのこと)の出番です。エルゴの日は、顧問にとって組み立てやすい日でもあります。 移動がなく、全員が同じ場所にいて、画面に数字が出るからです。
- 枠は水上の日と同じ。準備と説明、主練習、片づけと振り返り。
- 中身に迷ったら、エルゴのレート管理入門を選手と一緒に読んで、その日のテーマを一つだけ決めるのがおすすめです。 一緒に読むこと自体が、練習の組み立てになります。
- 画面の数字は便利ですが、毎回全力を測る場にはしない。表情と動きを 見る係であることは、陸の日も変わりません。
振り返りを、いちばんの仕事にする
90分の最後の5分は、顧問の出番です。 やることは二つ、練習ノートと一言ミーティングです。
- 練習ノート — 日付・やったこと・気づいたことを一行ずつ。 書くのは顧問でも、当番の選手でも構いません。
- 一言ミーティング — 一人一言、今日の気づきを話して終わる。長くしない。
